研修担当者のブログ
2025.05.15
「指導」から「理解」へ ─多様性理解の時代に必要な「他者理解」スキルとは
今年に入ってから、大学や短大の募集停止に関するニュースを多く耳にするようになりました。調べてみると、日本における出生数は私が生まれた1970年では193万人だったのが、来年高校卒業の2007年生まれ世代では108万人と半分に減っています。
教育も医療・福祉も大きな転換期にあると改めて感じます。
他者理解とは何か
他者理解とは、他の人の意見や考え方、視点などについて、「どうしてそのようになるのか」を他者の立場に立って考え、想像し、理解しようとする心構えのことです。
現在の介護業界は、労働人口の減少、多様な人材の受け入れ、外国人スタッフの増加など、急速な変化に直面しています。ダイバーシティというと聞こえが良いのですが、実際に多様な人材を受け入れて育成する立場である介護リーダーの負担の重さは介護現場の大きな課題になっていると考えています。
なぜ他者理解が必要なのか
介護リーダーは「知識」「経験」「コミュニケーション能力」など、個々のスキルが大きく異なっている人材を受け入れてOJTで育成を行っています。入職時点で「挨拶ができない」「メモを取らない」「ご利用者や先輩職員に友達口調で話しかける」ようなケースも珍しくありません。
受け入れ側から見ると、「非常識だ」、「最低限のことは配属前に教えておいて欲しい」などのネガティブな感情を抱いてしまったりするのですが、このような入職時のスキルのばらつきは当事者の問題ではなく、その人の育った環境や受けてきた教育が原因となっているということを理解し、自分との違いを受け止め、信頼関係を構築していくことが必要です。
他者理解を深める方法
介護リーダーとして、チーム内での他者理解を深めるには以下の7つのスキルが有効です。
1.傾聴(アクティブリスニング):
相手の話を遮らず、表情や沈黙に注目しながら丁寧に聴く
2.オープンクエスチョン:
内面に触れる「どう思う?」「なぜそう感じた?」といった質問を意識的に使う
3.感情ラベリング:
相手や自分の感情に気づき「不安そうだ」「今私は焦っている」と心のラベルを貼る
4.リフレクション(振り返り):
会話や対応の後に「なぜこうなったか?」を内省する習慣をつける
5. 診断ツールの活用:
エゴグラムやエニアグラムなどを使って、自他の傾向を知り、多様性を認識する
6. 心理的安全性の確保:
「否定されない」空気をつくり、安心して発言・行動できる関係を築く
7. フィードバック文化形成:
小さな感謝や気づきを言葉で返すことをチームの習慣にする
介護リーダーが本気で「この人を理解しよう」とする姿勢は相手にも伝わり、関係性を築く基盤になります。
多様な職員が協働する介護現場だからこそ、他者理解はチームづくりに欠かせない概念だと考えます。