研修担当者のブログ

2017.03.19

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ある特養、2030年。

その特養は、2000年初めには、とても良い施設だったらしい。

なんせ介護職の離職率が20%を超えていた時代であったにもかかわらず、

だれも辞めない施設だったのだ。

施設長は現場をあまり知らなかったが、職員に積極的に声をかけ、

利用者ともよくかかわってくれた。整理整頓ができていないと職員を注意した。

その特養は、2000年初めには、とても良い施設だったらしい。

人間関係が良好で、待遇も良かったため、

職員の入れ替わりが少ない状況が長く続いていた。

 

2010年代に入っても、その傾向は続いた。

職員の多くがはたらきざかりで、質の高いケアが提供できていた。

 

しかし

2012年、施設長の交代がきっかけで、ケアの質が落ち始める。

新しい施設長は、介護現場をよく知らなかった。

介護職員たちが、なんとなく自分をよく思ってないような気がして、

現場にも顔を出しづらい。

関係がつくれないので、

いい実践があっても気づかないからほめることができないし、

介護職員の服装の乱れや、

トイレがよごれっぱなしになっていることに気がついても,

あまり注意することはなかった。

 

新しい施設長が来て、現場は楽になった。

多少サボっても、少し遅刻しても注意されない。

これに不満を感じた一部の職員がやがて退職したが、

ほとんどの職員が「楽でいいわ」と働き続けた。

 

職員の入れ替わりが少ないために、少しずつ独自の文化、

風土が形成されていった。

たまにはいってくる中途採用の新人職員は、

数多く存在する暗黙のルールを理解できず、やめてしまう。

女性職員が産休などで休むようになり、

少しずつ人手不足が感じられるようになっていく。

 

 

2020年代、職員の平均年齢が40代後半に入る。

独自の文化、風土が更に成熟する。

他施設での介護経験のある新人でさえ、

びっくりしてしまうような数々の「独自ルール」。

 

見よう見まねでここのやりかたをまねてみるものの、

なぜか怒られてしまう。

ここは外国かもしれない…

 

そんな感じなので

たまに入ってくる若い新人職員が続かず辞めてしまう。

利用者だけでなく、介護職員の高齢化が顕著。

施設長の心は落ち着かない。

 

今日の日勤者は腰痛持ちのAさん。

入浴介助を無事にこなせるだろうか。

夜勤のBさんはご両親の介護負担が大きく、休みがちだ。

今日は来てくれるだろうか…

職員の不安は待遇面でも大きい。

若い人が入ってこないこの施設では、

職員の人件費が年々かさんで困っているのだ。

何とかしなければ、と焦る施設長。

しかし、気づいたときには手遅れだった。

 

そして2030年。

利用者の介護度の平均、4.5。

職員の介護度の平均、 2.5。

要介護者が要介護者を介護する「限界特養」として、

クローズアップ現代で紹介されたのだった。

 

 

おわり