研修担当者のブログ

2021.05.16

リーダーシップとマネジメント 書籍・論文のレビュー

サッカー関連本から介護職のチームマネジメントを学ぶ

1.今回のテーマ
このブログでは、少し前から介護施設の新人教育(を含む人材マネジメント)における施設長の役割について色々書いています。資料を探していたら『福祉施設長のあり方に関する検討会(全社協,平成27年3月)』という資料を見つけました。他にも先行研究をいくつか見つけて現在読み進めている所です。
論文検索サイトをあたってみると、「介護」「施設」「施設長」で検索するとヒットする論文は本当に少ないのですが、「介護」「施設」「マネジメント」で検索すると、結構すごい量の論文が出てきます。役職よりも役割に焦点があたってきているということなんだと思います。これらの先行研究を継続してレビューしながら、引き続き他領域のマネジメント本にもあたっていきたいと思っています。
で、前回に続きサッカー関連本のレビューです。やっぱサッカー関連本は面白いです。面白いだけでなく、チームマネジメントっていう視点でみると、本当に介護職のチーム作りに似てる部分がいっぱいあります。

2.ダイバーシティ(多様性)マネジメント
『社会や組織には様々な考え方を持った人がいます。その人それぞれの人生があり、経験があって彼らは意見を持つのです。それは小さな子供であっても同じです』
『言われる人間にも立場がありプライドがあり考えや意見があります』
『私がどんな話をしようと、選手たちにそれを受け入れるいい受信機がなければ、選手やチームに変化は生まれません』
これらは、元鹿島アントラーズ監督のオズワルドオリヴェイラの自伝『風のおもむくままに』からの抜粋です。知識や経験、バックグラウンド、年齢、国籍など介護現場を支える職員は本当に多様化しています。多様なメンバーにどのように働きかければ皆の意識や行動の変化を促せるのか、という部分で介護職も同じ部分が多いなと思いました。
【参考】https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%BA%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%A9

3.仕事の教え方(OJT)
①説明(目的の理解、何のために何をするのか)
②デモンストレーション(見せる)
③実行(トレーニングを始める、フィードバックする、無数の情報を整理してあげる)
④修正(シンクロコーチングとフリーズコーチング、状況の分析)
⑤自動化(アクションの繰り返しで動きが刷り込まれる)

実践を通して技術を身につける、という点でサッカーも介護技術も全く同じだなと感じました。介護現場では①と④がとても足りないように思います。ここが修正されると介護職のOJTはもっとうまくいくようになるのかな。

4.臨機応変(状況に応じた介護)
①『日本のサッカー指導者は、テクニック⇒戦術の順に教える。スペインではこの二つを同時に教える』
②『戦術とは状況を解決する行為である。サッカーとは社会的活動を伴うスポーツであり、その中で与えられる役割や仕事は、関わる全てのもの(時間、スペース、相手の攻略)が相互作用で影響を及ぼし、不確定要素の事柄が含まれているという特徴を持っている。そしてそれらはルールに測った中で行われる( セイルロ,FC バルセロナ,)』

介護は人間相手の仕事であり、思うようにいかないことが本当にたくさんあります。「介護現場では、具体的にどのような「うまくいかないこと」が起こり、それに対して『チームとしてどのように対応していくのか、どのような信念や考え方を持ってあたれば良いのか』ということを新人教育の段階から伝えていく必要があるのではないかと考えました。

5.経験値(予測する力)
①『共通イメージを持ってプレイする。個人でもチームでも、何が起こるかを先に予測できれば、スピーディーにプレイができる(中略)。そのためには個々の利用者やメンバーの相互理解が深まっていなければならない』
②『経験値を増やすには、1)試合に近い練習、2)リアルタイムでのコーチングやフィードバック』が有効である』


東北学院大の岡田先生が、介護職を「レベル1:ルーチンワークができる職員」「レベル2:問題解決が出来る職員」「レベル3:問題発見が出来る職員」の3つに分けている文章を以前拝見しました。「何が起こるか予測する力」とは、すなわち「問題を発見し、解決できる」職員の具体例だと考えます。予測する力を身につけるためには、経験値をあげていく必要があるそうです。「気づく力」はサッカー選手にも介護職にも共通するキーワードだな、と思いました。
看護師教育ではもうずいぶん昔から「シミュレーション教育」という実践的教育方法を行っているようです。個人とチームの能力を向上させるための実践的方法として、介護現場でもやっていけるといいなと思いました

③、④、⑤の参考文献は『サッカーの新しい教科書』,坪井健太郎,カンゼン(2014)