研修担当者のブログ

2022.10.18

リーダーシップとマネジメント

介護施設のシフト作成が大変です【前編】

リーダー研修をやっていると、シフト作成の大変さの話題になることが多いです。
職員の減少に加え、5回/年の有給休暇所得、40時間/週のくくり、職員間の合う合わないによるペアへの配慮、夜勤ができない職員の増加等々の要因で作成者への負担も多くなっている現状があります。
シフト作成は主にリーダーさんの仕事になっていますが、場合によっては月10時間以上かけて作成しているケースもあり、欠勤者が出るたびに変更、変更で本当に大変そうです。
今回はこの問題についてどう考えていけばいいか、書いてみようと思います。

勤務表に関する論文を検索すると。看護学分野においていくつか先行研究が見つかります。勤務表作成の難しさには、「ナース・スケジューリング問題」という名前がついていて、勤務表作成についての課題が整理されていました。中村(2012)によると「勤務表の作成所要時間は5時間未満~12時間以上」「勤務表の作成所要時間は平均8.9時間、このうち3.7時間が勤務時間外」「シフト作成の困難がスタッフに理解されていないことが、作成者のストレスになっている」とのことでした。看護分野でも長く課題とされてきたことだとわかりました。

私が現在研修させていただいている法人さんでも簡単なヒアリングをさせてもらいました。
(Q1)作成方法(基本ルール)や順序は、共有されているのか?
どこまで配慮しているか(公平性、家庭の事情)
(Q2)シフトの様式は、法人で統一されているか?
(Q3)シフト作成のマニュアルなどはあるのか?
(Q4)シフト作成の所要時間や負担感はどうか?
(Q5)だれがどのように作成しているのか(リーダーの抱え込みがあるのではないか)

ヒアリングを行った結果として、以下のようなことがわかりました。
【シフト作成の方法、所要時間や負担感】
・シフト作成の基本手順は、上司や前任者からの伝達により、ほぼ同じような手順で行われている。
・一人で作成している人、確認だけでも協力者にお願いしている人、協力ユニットのリーダーと交替で作成しているなど、フロアや部署によって違いがある
・ほとんどのリーダーが、自分の時間を使ってシフト作成をしており、所要時間はリーダーによって大きく異なっている。
・一部のリーダーがシフト作成にかなり強い負担感を感じている。
・過剰に勤務希望を言ってくる一部スタッフが、周囲の不満の原因となっている

【シフト作成の工夫や配慮している事】
・スタッフの家庭の事情は、入職時に聞いていたことに関しては、なるべくかなえるようにしている。
・ルールを超えた希望に対しては「理由をちゃんと言ってください」と伝えている。
・まずは全員の「希望休3日ルール」を優先すると伝えている。
・公休希望を出した人には、勤務変更に積極的に協力してね!と言っている
・定期的にメンバーにヒアリングしている(勤務表に関する希望を聞く、家庭の事情等変わる人もいる)
・ある程度できたら他人に確認してもらうことにして、「数名で確認したシフトです」と発信している。
・いつも同じ人がつくると「くせ」のあるシフトになる。それを避ける意味でも複数担当制にすることが望ましい
・勤務表作成ソフトの導入も検討したが、様々な条件(職員の相性等)をソフトに反映させるのが難しく断念した、等の意見がありました。

ヒアリングを行ってみて、シフト作成の難しさに関する課題を整理し、改善することは簡単ではないことが改めて理解できました。しかし一方で、ひとりでこの仕事を抱え込んでいる一部のリーダーさんに対して、負担軽減のアプローチをすることや、シフト作成の大変さを職員間で共有することで負担の偏りを軽減することはできるのではないかと考えています。そこで、次回のブログでは、もう少しこの問題を深堀りし、どのようにリーダーさんの負担軽減に取り組んでいけるのか、もう少し検討したいと思います。