研修担当者のブログ

2022.11.08

お役立ち情報 リーダーシップとマネジメント

介護施設のシフト作成が大変です【後編】

前回のブログでは、介護施設のシフト作成の課題について書きました。

今回は、前回の課題を踏まえてシフトを作成している方の負担軽減の方法を考えてみようと思います。

ヒアリングした方の工夫や、インターネットで調べて出てきた資料を参考に、以下のようなチェックリストをつくってみました。

 

シフト作成の負担軽減を目指すチェックリスト(20221022案)

□シフト作成に負担感を感じることはほとんどない

□シフト作成の基本手順は、上司や前任者から指導を受けた

□シフト作成に必要な法令や人員配置基準はだいたい理解できている(※1)

□シフト作成に必要なPCの操作、Excelなどのソフトウェア操作で困ることはない

□シフト作成を他者と協働で行うことが出来ている。

   作成を誰かと分担している

 □出来上がったシフトの確認を誰かにお願いし、「数名で確認したシフトです」と発信している。

 □シフトを作成できるスタッフを計画的に検討・指導している

□シフト作成で困ったときは、すぐに誰かに相談し解決している

□スタッフへの配慮や希望の調整で困ることはない(※2)

□シフト作成の大部分は、業務時間内で行っている

□スタッフからのルールを超えた希望に対しては「理由をちゃんと言ってください」と伝えている。

□シフト作成の基本的ルール(希望休は○回まで)は、チームの中で共有されている(※3)

□シフト作成の基本的ルール(希望休は○回まで)は、ほぼ守ることが出来ている

□まずは全員の「希望休ルール」を優先すると伝えている。

□家庭の事情は考慮しているが、それほど不公平なシフトにはなっていないと思う。

□公休希望を出した人には、勤務変更に積極的に協力してね!と伝えている

□定期的にメンバーにヒアリングし、シフトに関する希望を確認している(※4)

 

とりあえず第一案をつくったので、次はこれを実際に使ってみて、課題発見と改善につなげてみたいと思います。

以下、作成したチェック項目のいくつかの解説です。

※1シフト作成に必要な法令や人員配置基準はだいたい理解できている

・人員配置基準が守られていないと、行政処分の対象となり得るので注意が必要です。

・労働基準法もしっかり把握する必要があります。定められた労働時間や休憩時間、休日数に従ったシフトにしなくてはいけません。近年では労働基準法によって有給休暇取得のルールが設けられ、年5日の取得が義務化されています。これは有給付与の対象者であれば、アルバイトやパートでも適用されるものなので、計画的に取得するように促すことが必要です。また、就業規則で法人ごとに定められているルールも、確認しておきましょう。

 

※2スタッフへの配慮や希望の調整で困ることはない

介護施設においてシフト作成をする上で重要なのは、スタッフとのコミュニケーションであることは間違いありません。日頃から、働き方に対する考えや家庭の事情などを、会話の中で意識して聞いていくことが大切です。

シフトがどうしても埋まらない場合、スタッフに無理をお願いする場面も出てくるかもしれません。その際に「仕方ないな、協力しようか」と思ってもらえる関係性を構築しておくことを普段から心がけましょう。

信頼関係が構築できれば、シフトに対する不満を未然に防ぐ助けになり、仮に不満が出てもフォローが容易になるでしょう。スタッフとの円滑なコミュニケーションこそ、スムーズなシフト作成をする上での一番の重要ポイントなのです

 

※3シフト作成の基本的ルール(希望休は○回まで)は、チームの中で共有されている。

・希望が多すぎるとシフト調整が困難になってしまうため、ルールを明確にして周知する必要があります。

・1ヶ月に使える希望休の日数や申請の締め切り、同じ日に集中した場合の取り扱いなどをルール化しておくことが大切です。このルールが曖昧になると、スタッフ間で不公平感が生まれてしまいます。役職や雇用形態で差を設けるかどうかも明確にしておくとよいでしょう。

 

※4定期的にメンバーにヒアリングしている(勤務表に関する希望を聞く、家庭の事情等変わる人もいる)

・介護施設には、正社員やパートなど多様な雇用形態のスタッフがいます。送迎職員や周辺業務を担うスタッフなど、さまざまな職種が働く場です。個々のスタッフに「どのような働き方をしたいか」を確認することは、とても大切なことです。夜勤の回数や休みの間隔、生活スタイルや希望の収入、土日祝日の勤務についてなど、細かいところまでヒアリングをする必要があります。また、家庭環境や子どもの年齢など、スタッフを取りまく環境は生活状況に応じて年々変化していくので、定期的に状況を確認する必要があります。

・定期的に面談を行って現状把握することは、自分が職場に大事にされていると感じることにつながり、従業員の満足度がアップする効果もあります。面談以外に、日頃のコミュニケーションの中でも確認していくことがおすすめです。

 

以下は、シフト作成の手順の一例です。

1.確定要素からシフトを組む

事前に明らかになっている希望休や外部研修の予定、イベントなどから先にシフトに落とし込んでいきます。さらに、勤務条件が確定している非常勤のシフトを先に決めてしまうとよいでしょう。変更のきかない内容のものからシフトに組み込んでいくことがポイントです。

2.夜勤を決めていく

基本的な夜勤者のローテーションを事前に作っておくと便利です。ある程度の法則性があると、スタッフも予定が組みやすくなって便利な面があります。基本形さえできてしまえば、あとは希望休などに合わせて入れ替えを行うとスムーズにシフトが決まるでしょう。夜勤は一番負担の大きい勤務形態なので、日頃から身体の負担なく業務に入れるような仕組み作りをしておきます。労働基準法を基本に「夜勤→明け→休み」をひとつのパターンとして考え、一定のペースで公休を入れるように配慮します。

3.介護職以外で配置基準がある職種のシフトを組む

次に、定められた配置基準のある職種のシフトを組んで行くとよいでしょう。人員配置基準がある主な職種には、相談員や看護師、機能訓練指導員などが挙げられます。介護施設ごとに配置基準が違うので、自施設がどれに該当するのか、自施設の規模で必要となる職種と人数をしっかり把握しておきます。

4.完璧を目指さない

若干のかたよりや不公平が生まれてしまったとしても、翌月以降のシフトで埋め合わせすればよいと柔軟に考えましょう。非常勤の多い介護施設では、シフトを分割化するのも効果的です。たとえば、日勤を午前と午後で日勤Aと日勤Bに分割し、非常勤2名で対応します。完璧を目指さないことで柔軟に対応すると、意外な活路が見えるかもしれません。

5.時間外勤務やヘルプを検討する

いろいろ考えた結果、どうしても配置ができないという場合は、上長に相談してヘルプを要請してみましょう。複数事業所を持つ法人であれば、ヘルプとして応援勤務が期待できる場合もあります。ヘルプが難しい場合には、早出や残業などの時間外勤務に対応できるかをスタッフに相談してみるとよいでしょう。非常勤スタッフに、勤務日以外の出勤が可能かを相談してみるのもよいかもしれません。いずれの場合も、無理なお願いした後にはフォローが、今後のコミュニケーションにも重要です。日頃からモチベーションの低下を防ぐような働きかけを心がけましょう。

 

少し長くなりましたが、ここまで介護事業所のシフト作成の負担軽減について検討してきました。現在、いくつかの法人でリーダークラス職員の研修を行っているので、そこでこのチェックリストを実際に使ってみようと思います。しばらく時間がかかると思いますが、また改めて調査結果を報告したいと思います。

 

参考にしたサイト

介護施設のシフト作成の問題点、作り方のコツとは?

介護施設のシフト作成の問題点、作り方のコツとは?

介護施設のシフト作成の問題点とは

https://care-infocom.jp/article/ 介護の人事労務ナビ