研修担当者のブログ

2021.04.25

リーダーシップとマネジメント

介護施設の新人育成における施設長の役割

このテーマで論文書きたくて、色々先行研究を探していますが、なかなか良い資料が見つかりません。
新人育成以前に、そもそも施設長がどのように現場の人材育成に関わるのか、というところが介護分野ではあまり語られてこなかったのかなと思います。

近頃ようやくHRMとか人材マネジメントとかいう概念が介護・福祉分野でも語られるようになってきましたが、介護分野だとやっぱり「採用」「確保」ばかりが注目されて、「育成」のほうはなかなか深まっていかないな、というのが個人的感想です。

そんな訳で、今のところこの研究テーマに関係あるかな~と眺めているものは…

1)「福祉・介護サービス従事者の職務階層ごとに求められる機能と研修体系(全社協,2010)」
そしてこれに繋がる一連の報告書です。これが近年の介護福祉事業所の人材育成、およびキャリアパスのベースとなっていると思います。この報告以後、厚労省の介護人材育成に関する研究は全社協から三菱総研などの民間の事業所が行うということに変わってきているようです。
この報告書に書かれているキャリアパスは、基本的には「経験年数に応じて専門的知識や技術を学び新人職員から中堅職員⇒リーダークラス職員、そして管理者的立場になっていく」というものです。
色々な介護施設を見てきての私の実感としては介護職上がりのリーダーがさらにキャリアを重ねて施設長にまで上がっていくというケースはそう多くはなく、もう少し現実的な検討が必要だと感じてますし、経験年数でキャリアパスを描くのも、ちょっと時代に合わなくなってきているのではないかと感じます。

2)「職場学習論(東京大学出版会,2010)」
介護・福祉分野にこだわらずに人材マネジメントの資料を探すと色々なものがあり、中でも中原淳さんの)「職場学習論」は何度も繰り返し読んでいます(管理的立場の方の「精神的支援」の大切さが問われている)。

3)「介護人材マネジメントの理論と実践: 不確実性を活力に変える『創発型人材マネジメント』」
そんな中、介護職員の育成に関して、菅野雅子さんという方が書かれた本にとても共感しました。
この本は「介護現場のリーダークラス職員は、人材マネジメントについてどのような困難を抱えていて、どのように困難な局面を打開していくのか』ということを明らかにしていきます。
その中で、部下を成長させるリーダーの関わりには「タスク志向」「変化志向」「関係志向」の三つがあること、リーダーにこのような働きを促すためには、施設長のリーダーに対する支援行動が必要不可欠である事、が語られます。

これまでリーダーシップ論で語られてきた「PM理論(タスク志向・関係志向の2つの軸で新人と指導者を評価する)」に似ていますが、菅野はこれに「変化志向」という3つ目の軸を加えました。
タスク志向や関係志向よりも、変化志向は高度な概念であると感じました。
このような高度の概念を理解し、職員に的確なアドバイスを行うことが出来るのは施設長くらいじゃないかな、と考えています。
時々出てくる図表の説得力が半端なく、良い研究をしてるな~、とつくづく感じました。