研修担当者のブログ

2021.10.11

人材育成プログラムや研修カリキュラムの考え方

介護職員の成長モデル

※今回のブログは、ピーエムシーwebサイト2016.2.5付けの「研修担当者のブログ」を加筆修正したものです。

 

「仕事を通しての成長」は、全ての社会人にとって、とても大切なテーマです。

狭義には、自分の仕事の専門性を深めること。

広義には、自分の人間性を高めていくこと。

今回は、前者(自分の仕事の専門性を深めること)について書いていきます。

医療・福祉専門職の成長について考えるとき、外せないのがパトリシア・ベナーという看護理論の研究者です。

ベナーは看護職の成長モデルとして、「ドレイファスモデル」と呼ばれる技能習得モデルを使い、看護での適用を試みました。(ドレイファスモデルとは、ドレイファス兄弟が発表したチェス競技やパイロットなど、ある分野の技術にきわめて高いレベルの習熟度をしめした人たちの成長を5段階に分類したモデルです)。

ドレイファスモデル

段階 一言 内容
第1段階

初心者

レシピが必要 経験をほとんど持たない
コンテクストに左右されないルールが与えられれば仕事を遂行できる
学びたい意欲はそれほどない
第2段階

中級者

全体像を見たがらない 独力で仕事に当たれるが問題処理に手こずる
ほんの少しだけ決まったルールから離れられる
情報を手早く入手したがるが、理論・原則は望まない(私には関係ない)
第3段階

上級者

問題解決ができる 問題を探し出し解決する、但し細部のどの部分に焦点を合わせるべきかの決定にはさらなる経験が必要
チームの指導者的役割、初心者への助言、達人のサポート
第4段階

熟練者

自己補正が可能 十分な経験と判断力を備える
自己改善、他人の経験から学ぶ、格言を理解しうまく適用する能力を備える(例:パターンを効果的に適用)
何が失敗につながるか分かる
第5段階

達人

直感で動く 膨大な経験があり、上手に引き出しぴったりの状況で応用できる
理由があってそうするのではなく、直感に従って行う(「正しいと感じた」)
本質に関係のない部分と重要な部分の区別が無意識下でできる

※図はhttp://www.02.246.ne.jp/~torutk/seway/dreyfus.htmlを参考に作成

その結果、看護師もドレイファスモデル同様に「初心者」から「達人」までいくつかの段階を経て成長していることが明らかになったのです。

ベナーが構築した看護師の成長モデル

新  人 経験を必要としない客観的属性に焦点を置く
少し経験を積んだ新人 最低限許容できる看護能力を有する
一 人 前 経験に基づいた指針を用いる
中  堅 状況を全体として捉える
達  人 裏付けのある直感

図はhttps://knowledge.nurse-senka.jp/4836/を参考に作成

 

 ベナーの成長モデルがベースとなって、看護師のクリニカルラダー(成長のはしご)の構築が進みました。

この成長モデルを見ると、介護職の成長も、大体は同じような段階を踏むのかな…と思っています。

看護師の多くが成長の第2段階でとまっている、という説があるそうですが、実際に自分が介護職をやっていたときを思い出すと、やっぱり第2段階でとまっていたように思います。

せめて第3段階までいけば、新人育成も、もう少しちゃんとできたのかな、と今になって思います。

 

ベナーの研究には「初心者に対するオリエンテーション・プログラムやインターンシップの改善は、初心者の離職を防ぎ、職場生活を改善するための有望で効果的なアプローチである」など、興味深いものが色々とあり、大変勉強になっています。

 

それから、「看護の危機」という本もあわせて読みました。以下、いくつかメモを残します。

1)日本と海外の医療サービスの評価基準には大きな違いがある。イギリスなどいくつかの国では利用者・患者も評価に参加する。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000041766.pdf

2)アメリカには看護師目線で病院を評価する基準がある(マグネット・ホスピタル)

3)患者ケア・アウトカムの改善(利用者への質の高いケア)が、看護師の不満足度を改善させる

4)大規模な大学病院では、対人関係上の軋轢を繰り返し経験する場合にその本人(看護師等)にカウンセリングを受けることを要求している

5)健康的な職場環境づくりのために必要な要素(AACCN) :①巧みなコミュニケーション、②協働、③効果的な意思決定、④適切な人員配置、⑤意義ある認識、⑥本物のリーダーシップ

6)看護業界発展のために必要な取り組み:①看護全体の一致団結した努力、②これまで蓄積した実践の根拠を知的に活用、③政治活動

まだまだ色々なことが書いてありました。情報量が多く、なかなか消化しきれません。

 

ちなみに日本もアメリカも、看護師不足の改善のきっかけは、待遇と労働環境の改善だったそうです。

やはり介護職の人材不足を改善するためには、待遇・労働環境の改善は大事な部分だよな…と改めて思います。

しかし、介護職の待遇改善のためには、介護職の仕事の価値を高める事、社会的に認められる職業にしていくことが必要不可欠です。現場の良い実践を見える化し、発信していけるようこれからも取り組んでいきます。